はじめに
jupyter Notebookはデータサイエンスのプロジェクトや研究で頻繁に使用されるツールです。
このノートブックをPDFに変換する必要がある場面も多く、そのためのいくつかの方法が提案されています。
しかし、これらの方法にはそれぞれ課題があります。
この記事では、それらの方法と課題を概観し、新しい効率的な変換方法を紹介します。
特に、複数の.ipynbファイルを一括で変換する場合や、数式を含むノートブックを変換する場合に本記事の方法は役立ちます!!
これまでの変換方法とその課題
1. jupyter nbconvert コマンド
方法
nbconvertを使用して、Jupyter Notebookを直接PDFに変換します。
この方法は、.ipynb ファイルを中間の .tex ファイルに変換し、次にこの .tex ファイルをPDFに変換するという手順で動作します。
課題
LaTeXの依存
この変換方法はLaTeXを介して行われるため、システムにLaTeXが正しくインストールされている必要があります。
パッケージの問題
一部のLaTeXパッケージが不足しているか、または特定の設定が適切でない場合、変換中にエラーが発生することがあります。
レイアウトの崩壊
日本語の場合、タイトルや日付などのレイアウトがずれてしまうことがあります
2. wkhtmltopdf
方法
wkhtmltopdfは、Webkitエンジンをベースにしたコマンドラインツールで、HTMLドキュメントをPDFに変換します。
このツールは、Webページのレンダリング能力を活用して高品質のPDFを生成することができます。
課題
JavaScriptの互換性
MathJaxや他のJavaScriptベースのレンダリングツールとの互換性に問題があるため、 数式が正しくレンダリングされません
3. ブラウザの印刷機能
方法
ほとんどのモダンブラウザには、WebページをPDFとして保存するための印刷機能が組み込まれています。
この機能を利用すると、Jupyter Notebookをブラウザで開き、PDFとして保存することができます。
課題:
操作性の悪さ
複数のファイルをPDFに変換するときには、ipynbファイルを一つずつ開いて、一つずつ印刷プレビューして…というようにかなり面倒くさい作業になってしまいます。
本記事の方法: シェルスクリプトを活用した変換
本記事では、Jupyter Notebookの.ipynbファイルをPDFに変換する新しい方法として、シェルスクリプトを使用した自動変換アプローチを提案します。
提案する方法は、いくつかのステップで構成されており、まずJupyter Notebook(.ipynbファイル)をHTMLに変換し、次にHTMLをPDFに変換します。
特徴
一括変換: 複数の.ipynbファイルを一度に変換することができます。
ブラウザのヘッドレスモード: Google Chromeのヘッドレスモードを使用して、高品質なPDFを生成します。
JavaScriptの完全なレンダリング: ブラウザのヘッドレスモードを使用することで、MathJaxなどのJavaScriptベースのツールによるレンダリングが完了するのを待ってからPDFを生成します。
環境構築の簡単さ: Latexを必要としないため簡単に再現できます。
環境構築
1. Jupyter Notebookのセットアップ
.ipynbファイルをhtmlに変換するためのツールをインストールするためにAnacondaが必要です。
インストール方法:
Anacondaの公式サイトから、Anacondaをインストールします。
詳細は省きます。
2. ライブラリのインストール
nbconvert
nbconvertは、Jupyter Notebookの内容を様々なフォーマットに変換するための便利なツールです。
役割
ipynbファイルを静的なフォーマット(例: HTML, LaTeX, PDF)に変換します。
グラフやコード、マークダウンなどを適切に整形して出力します。
インストール
conda install nbconvert
3. Google Chromeのインストール
Google Chromeの印刷機能が必要となるのでインストールします。
インストールしたGoogle ChromeのPathを控えておいてください。
/Applications/Google\ Chrome.app/Contents/MacOS/Google\ Chrome
ipynbをpdfに一括変換するシェルスクリプト
#!/bin/bash
# 引数が指定されていない場合はエラーメッセージを表示
if [ "$#" -ne 1 ]; then
echo "Usage: $0 /path/to/your/directory"
exit 1
fi
# 引数で指定されたディレクトリへ移動
cd "$1"
# すべての.ipynbファイルに対してループを実行し、.htmlに変換
for notebook in *.ipynb; do
jupyter nbconvert --to html "$notebook"
done
# すべてのHTMLファイルに対してループを実行し、PDFに変換
for file in *.html; do
# ファイル名から拡張子を除去
filename=$(basename -- "$file")
filename_noext="${filename%.*}"
# Google Chromeのヘッドレスモードを使用してPDFに変換
/Applications/Google\ Chrome.app/Contents/MacOS/Google\ Chrome --headless --disable-gpu --virtual-time-budget=5000 --print-to-pdf="$filename_noext".pdf "$file"
done
※注意点
上記のシェルスクリプトは、MacOSのGoogle Chromeのデフォルトのインストール場所を前提としています。しかし、環境によってはGoogle Chromeのインストール場所が異なる場合があります。そのような場合は、シェルスクリプト内の最後から二行目にあるGoogle ChromeのPathを適切なPathに変更する必要があります。
使い方
1. シェルスクリプトの準備
上記のシェルスクリプトをconvert_to_pdf.shという名前で保存します。
2. 実行権限の付与
シェルスクリプトを実行可能にするために、次のコマンドを実行して実行権限を付与します。
chmod +x convert_to_pdf.sh
3. シェルスクリプトの実行
シェルスクリプトを実行して、指定したディレクトリ内の.ipynbファイルをPDFに変換します。
./convert_to_pdf.sh /path/to/your/directory
このコマンドを実行すると、指定したディレクトリ内のすべての.ipynbファイルが順番にHTMLに変換され、次にPDFに変換されます。
まとめ
Jupyter Notebookの.ipynbファイルをPDFに変換するための新しい方法を紹介しました。従来の方法にはいくつかの課題がありましたが、本記事で紹介した方法を使用することで、これらの課題を効果的に解決することができます。
特に、複数の.ipynbファイルを一括で変換する場合や、数式を含むノートブックを変換する場合にこの方法は役立つでしょう!!
今後もデータサイエンスのプロジェクトや研究でJupyter Notebookを活用する方には、この変換方法が役立つことを期待しています。